リリカの作用機序の雑話(過去FBから)

≪リリカってどうなのよ?≫って話

リリカ

先週、神経障害性疼痛の疑いがある新患さんが立て続けに2名来られた。何をもって神経性の痛みとするかは難しいですが、痛みの質がまず普通とは異なりますね。

「チクチク針が刺さる」「ビリビリ痺れる」「ヒリヒリ焼けつく」「ビリっと電気が走る」

そのようなに言われることも多いです。また、筋肉が緩む姿勢にしても痛みやしびれが出ている、治療後の変化が全くないなど(このへんでトリガーポイントの関連痛とは鑑別可)

<普通の痛みではない異常な痛み=神経性障害性疼痛>
異常な痛みの機序は色々なことが絡んできますが、今回は「リリカ」についてのお話なので、痛みの現場は1次ニューロンから2次ニューロンへと繋がるシナプスです。

画像の説明
「資料 日本臓器製薬」

1次ニューロンから2次ニューロンへは、神経伝達物質である、グルタミン酸やサブスタンスPが放出されて2次ニューロンのシナプス後膜に作用しNa+が細胞内に流入し、膜電位が上昇し、電位依存性ナトリウムチャネルが開き、活動電位が発生し、3次ニューロンへと伝わります。

そして、シナプス小胞の中に入っている神経伝達物質を放出させるきっかけを作るのが、シナプス前終末にあるCa2+チャネルから細胞内に流入する「Ca2+」です。

リリカ作用機序

このカルシウムイオンの流入により神経伝達物質の放出が始まります。
これは通常の普通の痛みの場合です。炎症とか動作痛とかほとんどの痛みです。

本題に戻って、よく坐骨神経痛や狭窄で痺れが長引いている患者さんに処方される「リリカ」ですが・・・

<これって、どこに効くの>
リリカの作用機序は簡単に言うと、Ca2+チャネルを閉じることにより、Ca2+の細胞内の流入を阻止し、神経伝達物質を放出させないことにより痛みの伝達を押さえます。

[重要な事実]
Ca2+チャネルにはいくつかの種類があり、神経細胞に存在するチャネルは「N型チャネル」と言われるものです。血圧などに関係する血管平滑筋はL型です。そして、チャネルはいくつかの部品(ユニット)で出来ており、α1という部品(Ca2+が通過する穴)からCa2+が細胞内に流入します。降圧剤と呼ばれるCa拮抗薬は直接Caが通過する穴にはまり、蓋を閉じる形になりCaの流入を阻止します。

ではリリカは?

実はリリカは直接α1に蓋を閉じる訳ではないんです。
もし、直接α1に作用するのであれば、普通の痛み(炎症とか動作痛)もブロックしてしまいます。

リリカが作用する部品(ユニット)はα2δという場所です。しかし、このα2δは通常時は働いていないのです。
神経の損傷や血流不全による神経の変性(こっちのほうが多いのでは?)によりα2δの発現の亢進します。
これが「普通でない痛み」の始まりです。

<よーーーーーく考えて!!>
来院される多くの患者さんは普通の痛みの場合が多いと思いますので、α2δの発現は少ないと思われます。その場合、α2δに作用して痛みを止めるリリカを飲んで効果はあるのでしょうか?

ないです。はい。全くもって的はずれな処方です。
だけど皆さん飲んでますよね...

しかし、痛みのメカニズムに沿ったものであれば、病理的な異常な痛みの場合は痛みの軽減もあることでしょう。
副作用の問題もありますが、すべての薬がダメなわけではなく、痛みのメカニズムに基づいた処方をしていただきたいものです。

リリカを飲まなくてもアクティベータ・メソッドで改善した喜びの声
30代男性 坐骨神経痛

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